100年前の出来事
今年は2024年なので1542年から1924年までの100年ごとに、Wikipediaから自分が気になったことを拾った。
1524年
- ジョバンニ・ダ・ヴェラッツァーノがアメリカ大陸を発見する
- ドイツ農民戦争の勃発
- フランシスコ・ピサロがインカ帝国の第一次調査を行う
- ジョバンニ・ダ・ヴェラッツァーノがマンハッタン島に到達
1624年
- フランスのリシュリューが宰相に任命(-1624年)
- 三十年戦争でフランス(リシュリュー)主導の対ハプスブルク同盟結成
- ノルウェーのオスロが大火で破壊される
- 寛永元年
- 江戸幕府がスペイン船の来航を禁じる
1724年
1824年
- 1月
- 2月
- イギリス、イタリアがソビエト政権を承認
- ラプソディ・イン・ブルー初演
- 3月
- トルコでカリフ制が廃止
- 4月
- イタリアでファシスト党が勝利
- 5月
- 6月
- 7月
- 8月
- ドイツ賠償問題に関するドーズ案成立
- 9月
- 東京将棋連盟設立
- 10月
- 11月
- 12月
- エドウィン・ハッブルが系外銀河の発見を発表
BOJのYCCに関する個人的なメモ
画像*1
- 導入の経緯*4*5
- 2013年4月:”量的・質的金融緩和”開始
- 2016年1月:”マイナス金利付き量的・質的緩和”開始
- 2016年9月:”イールドカーブコントロール(YCC)”とオーバーシュート型コミットメント開始
- 2021年3月:10年もの国債の金利の変動幅を±0.25%にする
- 貸出促進付利制度:金利下落時の金融機関への影響に対して、BOJが貸出促進の各種資金供給について残高に応じた金利のインセンティブを付与する制度
- https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2021/k210319a.pdf
- 2022年12月:10年もの国債の金利の変動幅を±0.5%にする
- 2023年7月:変動幅を目途年、長短金利操作を従来より柔軟にする(長期金利実質1.0%を容認)
- 2023年10月:さらに柔軟化することを発表
- 日本の物価の推移*9
- Core CPI (Core consumer Price Index):総合指数から生鮮食品を除いた指標
- 長期
- 1年
*1:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/10974994/
*2:イールドカーブ・コントロール (YCC) って何 ? 為替に与える影響は ? | マネー | おすすめコラム | 大和ネクスト銀行
*3:イールドカーブ | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
*4:【1分解説】イールドカーブ・コントロール(YCC)とは? | 執筆者なし | 第一生命経済研究所
*5:2%の「物価安定の目標」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」 : 日本銀行 Bank of Japan
*8:NIY=F Interactive Stock Chart | Nikkei/Yen Futures,Dec-2023 Stock - Yahoo Finance
中東に関する個人的なメモ
神経質な対立が生じている
- ハマスによるイスラエルの攻撃に対する”ガザ”への報復が行われている
- ハマスによる攻撃の結果と、イスラエルの報復攻撃の結果の共有がSNSで広がっている
- アラブ、イスラム社会のハマス、パレスチナへの連帯と、米国と米国を含めた”G6”のイスラエルの連帯が対立軸を作っている
- 地域の問題だけではなく、G6をはじめ欧米に多数存在している”パレスチナを支持するイスラム系移民”との対立に拡大している
- イスラエルは強硬的な姿勢を崩さず、特にヨーロッパからの支持を下げているが、アメリカは強く支持している
- ウクライナ侵攻によるロシアの国連常任理事国としての拒否権が国連機能を麻痺させているように、アメリカの拒否権が国連機能を麻痺させようとしている
- イスラエルに対する一時的な戦闘行為の停止への拒否権発動
- おそらくネタニヤフ政権は穏便に済まさない
- ネタニヤフ政権は”次期選挙”を見越して強行姿勢を崩すことができない
- ハマスは攻撃で政治的目的を”成功”させ、攻撃を辞める必要がない
- 上記の理由により武力停止交渉が成立しない可能性が高い
- 中東の問題は再度欧米先進国の世界的な産業構造にNOを突きつける可能性が出てきた
- ロシアの天然ガスと中東の石油が手に入れられない場合、西側ヨーロッパ(特にイギリス、ドイツ、イタリア、スペインやベネルクス等を想定(フランスは除く))のエネルギー状況が悪くなる可能性がある
ハマスがイスラエルを攻撃した
イスラエルは国際社会の同情を買いながら、ガザ地区のハマスの掃討作戦をするだろう。
イスラエルが最も重要視するのはアメリカとの関係なのは疑いようがない。もしアメリカとの関係がなくなればイスラエルが置かれている地理的な位置と同じように孤立化するからだ。そのため核兵器や非人道的な攻撃を行うことができない(ただしイスラエルは過去にも西側が持ちうる”ライン”を超えるようなあらゆる攻撃をパレスチナ自治区に加えていたことは忘れてはならない)。
ハマスはイスラエルの報復を予見しているはずだ。2023年10月6日は、第四次中東戦争(1973年10月6日から10月23日)から50年になる節目の年で*1、また10月6日はユダヤ教の贖罪の日(ヨム・キプル)で安息日になっている*2。そのため、戦略的な行動というより、節目に合わせた攻撃と見ざるを得ない。しかし、今回の攻撃はかなり用意周到に準備されており、イラン製の武器やドローン攻撃、一部ではパラグライダーを使った空挺作戦も行われている。その中でイスラエル軍の戦車や装甲車が鹵獲されたり、軍人や警察、民間人が”捕虜”としてガザに連れ去られている。特にネットに出回っているハマス側の動画では、ウクライナ軍がロシアに対して行っているようなイスラエルの重要拠点に対するドローン攻撃の様子が公開されている。イスラエルのネタニヤフ首相は戦争状態を宣言し*3、イスラエル空軍によるガザ地区への空爆の様子が動画で公開されている。
ネタニヤフ政権は2022年12月に第一党を”リクード”党で連立政権として発足している。閣僚の中には右派が多く任命され、”イスラエル史上最も右よりの政権”とされている*4。また2023年7月にネタニヤフ政権は裁判所を弱める司法制度の改革を可決し、市民が反対デモを行っていた*5。このように民主的な政権から、政権が多くの権力を持つ専制的な体制への移行を行っている。
ハマスは2007年のガザの戦闘でファハタを追放後、ガザ地区を当地している。イスラエルとは散発的に戦闘を繰り返しており、2008年のガザ紛争、2014年のガザ侵攻*6では両方ともイスラエル・パレスチナ紛争で第四次中東戦争以降最大の犠牲者を出している。
ネタニヤフ政権は今回の攻撃を受け、ハマスと”穏便な合意”をするつもりはないだろう。そのため国際社会の停戦に向けた動きが重要になるが、アメリカやイギリスはイスラエルを支持しており、英米の介入による早期停戦は難しい。アラブ諸国はパレスチナに同情的で、サウジアラビアやカタールはパレスチナ問題が起因しているとしている。またアメリカはイスラエルとサウジアラビアの国交正常化に向けた動きを促していたが、難しい状況に追い込まれる*7。もし停戦をするなら、2014年と同じように両者が勝利宣言を行い、軍事に勝るイスラエルがガザ地区の領土を一方的に”併合”するのではないか。しかし今回はハマスの先制かつ民間人への攻撃のため、イスラエルが弱腰になることはありえないが、一方で無差別な攻撃はアメリカを始めとした西側の支持の減少を招く。またイスラエルが空爆や地上軍の投入をした場合、ハマスはガザ地区の市民や”捕虜”を”人間の盾”として利用することが予想される。イスラエルの目標がまだ不明なため、どのような経過をたどるか不明な要素が多いが、今回の攻撃が新しい紛争になることは間違いないだろう。
画像*8
*1:https://ja.wikipedia.org/wiki/第四次中東戦争
*2:https://en.wikipedia.org/wiki/Yom_Kippur
*3:https://www.yomiuri.co.jp/world/20231007-OYT1T50201/
*4:https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/194a49bb032e66de.html
*5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR24BY80U3A720C2000000/
*6:https://ja.wikipedia.org/wiki/ガザ侵攻_(2014年)
*7:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230921/k10014202041000.html
今年の冬は歴史が動く冬になるかもしれない
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世界はこの冬を耐えることができるか
ウクライナが9月10日に大幅に領土を奪還した*2。そこから進軍の勢いがとどまることなく、9月30日に要衝のリマンをロシアから解放した*3。そのような中、ロシアのプーチン大統領はウクライナの4州に対して9月30日「併合」を宣言し、自国に「編入」した*4。この急な「併合宣言」はウクライナの急襲により予定を前倒して行われた。
リマンの位置*6
プーチン大統領はこの声明文の中で「あらゆる兵器」を使用する可能性を示した。「あらゆる兵器」の中には核兵器が入るだろう。この核兵器は、いわゆる原子爆弾ではなく、戦術核兵器と呼ばれる低出力核兵器が候補として考えられている。
ゼロとは言い切れない状況になっていることは間違いない。
そのため、「どのようなタイミングで(戦術)核兵器が使われる可能性が高まるか」を考察する。
ここでは関係国がどこまで「追い込まれた」状況になるかという観点から考える。
ロシアが「追い込まれる」状態
ロシアが追い込まれる状態になるときは、次のケースが考えられる。
ウクライナはロシアに奪われた領土の奪還を目指している。現在のウクライナ軍は東部の一部の領土奪還に成功し、反対にロシア軍は兵器をそのまま置いて逃走するなど、統率能力の低下や人員の減少に悩まされている。その結果、ロシアは部分動員令が発令され、ロシア人の青年が軍に徴兵される状況になっており、ロシア人の国外脱出が報道されている。またプーチン大統領の「あらゆる兵器」発言もこのウクライナの進軍を受けてのものと考えられる。
ウクライナがロシアから奪われた領土にはいくつかレイヤーがあると考えられる。
- 今回編入宣言をされたザポリージャ、ヘルソン、ルハンシク、ドネツク各州のエリアのレイヤー
- すでに独立宣言をしていたよりロシア国境に近いルハンシク人民共和国、ドネツク人民共和国のエリアのレイヤー
- 2014年に奪われたクリミア半島のエリアのレイヤー
それぞれの地域は今回の宣言で「併合」された地域、ロシア軍が「特別軍事作戦」をする理由となった地域、そしてロシア海軍の黒海艦隊があるクリミア半島地域だ。
おそらく今回編入宣言をした地域を奪還された場合、(戦術)核兵器を使う可能性は低いと考える。それはこの地域がアゾフ海沿岸の支配を目的にした地域であり、かつ現時点でロシア軍が明確に支配をしている地域として編入した考えられるからだ。
旧ルハンシク、ドネツク人民共和国の地域が奪還された場合、(戦術)核兵器を使う可能性は前者に比べるとわずかに高いと考える。そもそもこの「特別軍事作戦」が始まったのはこの地域をウクライナの「ネオナチ政権」から解放することだからだ。戦争目的であるこれらの地域が再度ウクライナに支配されることになれば、ロシアにとってこの戦争の大義がなくなる。
クリミア地域が奪還される可能性が出た場合、(戦術)核兵器を使う可能性が最も高いと考える。この地域は2014年からロシアが強権的に実効支配をする場所で、黒海艦隊の母港であり、地理的、歴史的にもロシアにとって重要度が高い。
しかし(戦術)核兵器を使うことは、今回の戦争のステップを数段上げることになり、民間地域に対する攻撃などが実施されるなど最悪の事態が起こった場合、NATOの直接軍事介入が考えられる。だがNATOも一枚岩ではない。ロシアと国境を接する国はロシアに強硬で、地理的に遠いイギリスやアメリカも比較的強硬だ。一方、ロシアにエネルギーを依存するドイツやイタリアは比較的ロシアに寛容であり、フランスはマクロン大統領がプーチン大統領と定期的に連絡を取り合っている。そのため、ヨーロッパが追い込まれた場合、またアメリカが追い込まれた場合、ロシアの(戦術)核兵器を使用するボーダーラインが緩まったり、ウクライナへの支援が減少する可能性がある。
ヨーロッパが追い込まれる状態
ヨーロッパが追い込まれる状態は今冬のエネルギー問題、インフレ、そして極右の台頭だ。
- ロシアへの経済制裁によるエネルギー価格の上昇
- COVID-19とロシア制裁によるインフレ
- ヨーロッパ地域での極右政権樹立、極右政党の台頭
ヨーロッパは原子力を除き、天然ガスなどをロシアに依存していた。例えばドイツは2016年には原油の40%、天然ガス60%、石炭28%をロシアから輸入していた*7。そしてロシアに対する経済制裁の結果、ヨーロッパはロシアの資源の輸入を順次停止し、欧州各国の公共料金は上昇を続けている。例えばイギリスの電気ガス料金は80%引き上げられ標準家庭で4188ドルに達した*8。
またCOVID-19の流行で上昇していた物価がロシアへの経済制裁によりさらにブーストしている。2022年8月のEU域内のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は前年比9.1%上昇しており*9、エネルギーと飲食料を除いたコア指数も5.1%上昇している*10
HICPの時系列グラフ(https://www.ecb.europa.eu/stats/macroeconomic_and_sectoral/hicp/html/index.en.html)
企業や店舗、家計に与える影響が長期化すれば、経済が混乱することが予想される。経済の混乱はよりポピュリスト的な政党の進出を押すことになる。そしてそれらのポピュリスト的な政党は右派や極右であることが多く、党や党首は親ロシア派が多い(例えばフランスのルペン、イタリアのメローニなど)。これらのポピュリスト的な右派や極右政党がヨーロッパ各国で増えれば、ロシアに対して団結した行動が難しくなる。その結果、ウクライナへの金銭、武器の支援も減少する可能性がある。そして、これらの可能性はロシアの選択肢を増やすことになり、NATOを内側から混乱させる効果を持っている。
アメリカが追い込まれる状態
アメリカが追い込まれる状態は、中間選挙によるトランプ派の勝利とアメリカ第一主義の復活とインフレ対策のための金利の引き上げだ。
- アメリカの中間選挙でバイデン政権がまともに政権運営ができないほど共和党が支配的になる
- 共和党の候補者のうち、MAGA(トランプ派)議員が議席を多く獲得し、時期大統領選挙にトランプ大統領が出馬宣言をして、ショーイズム的な政治と選挙が行われる
- インフレ対応のためFRBが金利を上げ続け、経済にダメージを与える
中間選挙は大統領選挙と大統領選挙の間にある連邦議会の上、下院と州知事選挙で2022年11月8日に予定されている*11。一般的に中間選挙は大統領選挙への熱狂が落ち着いたころに行われれるため、与党の議席が減ると言われている。今回も同様に共和党候補が民主党候補より議席を取ることが予想され、「ねじれ議会」になり、アメリカの意思決定が遅れる可能性がある。
特に今回の選挙ではトランプと政治的考え方が近い「トランプ派」の候補が多い。トランプが大統領選挙のときによく言っていた「Make America Great Again」から、「MAGA候補」と言われる。現在はMAGA候補の優勢が伝えられており、穏健的な共和党候補が出馬を取りやめる事態もおきている。MAGA候補が増えれば、トランプと同様、自国第一主義やロシアに対して穏健的な議員がアメリカに増えることになる。
最後に、このようなポピュリスト的な候補が増加するのは、アメリカの経済状況に原因があると考えられる。COVID-19の流行から世界各地でのロックダウンの影響でサプライチェーンが傷んでいる。また各国の政府が補助金を出しているため労働者が市場に戻らず、労働者の賃金が向上して物価が上がる循環が続いている。特にアメリカではインフレ率が8.3%で物価の上昇が深刻になっている*12。
FRBはインフレの抑制のため、QE(量的緩和政策)をやめ、QT(量的引き締め)、そして金利の引き上げに動いている。単純化すれば、金利の引き上げは債権金利の引き上げにも繋がり、米国債の需要が上がる。その結果、アメリカではドルが高くなり、その他の国は相対的に自国通貨安が起こる。金利と物価の上昇を中長期に渡ることはアメリカ経済にとって悪影響をもたらす。このような経済環境の中で、トランプ旋風のときに言われた「貧しい白人たち」が自国第一主義的なMAGA候補に投票することは想像に難しくない。
戦争が始まった当初、世界は協調してロシアに反対する姿勢を見せた。しかしCOVID1-19が流行してから感染症による経済へのダメージと、世界的な供給不足によるインフレが重なり、戦争の影響が広がる中、グローバル経済は徐々に閉じてきている。エネルギーや資源、穀物などの輸出を停止した国が出てきており、その結果、インフレに拍車がかかる悪循環が起き、一部の国ではデモや暴動がおきている。
経済の痛みは生活の痛みに直結する。これから北半球は冬を迎え、燃料の価格は家計に大きく響く。ロシアはウクライナを支援する国々の経済の混乱と自国第一主義の台頭を見逃さないだろう。ロシアへ融和的な政権が各地でできれば、ロシアの自由度は上昇する。ロシアへの反撃が少ないと思われれば、ロシアは躊躇なく(戦術)核兵器のオプションに手を出すだろう。
経済と家計が痛む冬にどれだけ耐えることができるか。
それが今後の世界の歴史を大きく動かす。
*1:https://pixabay.com/ja/photos/%e9%9c%a7-%e9%a2%a8%e6%99%af-%e5%b1%b1-%e3%82%b5%e3%83%9f%e3%83%83%e3%83%88-7482180/
*2:ウクライナ軍、電撃的な反転攻勢:https://graphics.reuters.com/UKRAINE-CRISIS/jnvwemlodvw/ja/
*3:再送ウクライナ軍、目標達成順調 リマン奪還はロシアに痛手=米国防総省高官:https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-usa-pentagon-idJPKBN2QY210
*4:ロシア、ウクライナ4州の「編入」を一方的に宣言 ウクライナはNATO加盟申請を発表:https://www.bbc.com/japanese/63086836
*5:https://www.asahi.com/articles/ASQ9B031SQ99UHBI07B.html
*6:https://www.bbc.com/japanese/63106264
*7:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2019html/1-2-3.html
*8:焦点:光熱費が欧州の家計直撃、シャワーは職場で食事は1回:https://jp.reuters.com/article/power-prices-fuel-poverty-idJPKBN2PZ09P
*9:ユーロ圏CPI速報値、8月は前年比+9.1% 再び過去最高更新:https://jp.reuters.com/article/ez-cpi-aug-idJPKBN2Q10VU
*10:ユーロ圏CPI、7月改定値は前年比+8.9% 過去最高更新:https://jp.reuters.com/article/euro-cpi-idJPKBN2PO0K8
*11:いったいどんな選挙?アメリカ中間選挙の「基礎」を解説:https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2022/09/30/25701.html
*12:米の8月の消費者物価指数8.3%上昇 記録的水準のインフレ続く:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220913/k10013816811000.html
次の階段をどちらに進むか
昨日7月8日、安倍元首相が凶弾に倒れた
憲政史上、最も長い在任期間だった首相経験者が、白昼に改造銃で武装した男により銃撃された。この出来事は日本のみならず世界にも速報され、起きるはずがないと思われた日本における銃撃事件と被害者が元首相という事件の衝撃は各国に驚きを持って受け入れられた。
特に日本では戦前の憲政体制へのテロ事件である五一五事件や二二六事件*1での首相や首相経験者に対する攻撃を想起させ、ネット上でも戦前への回帰や恐怖を思わせる書き込みが目立ち、民主主義や選挙を改めて重要だと考える人が多かった。一方で安倍元首相に対して批判的な人の中にはこの事件を別の見方で受け取る人がおり、それに対して攻撃が発生している。
今回の出来事により短期的に発生しうることについてリスト化した。
- 選挙について
- 経済について
- 外交について
- 安倍元総理を特使として派遣することができなくなる
- 対中、対韓に強硬な姿勢が軟化する可能性がある
- 政局について
- 自民党最大派閥の安倍派(清和会)の後継問題が出る
- 保守、右派の支持が減少する
首相経験者に対する銃撃により、多くの人が動揺していることは間違いない。その中で民主主義が大事だと言いながら、反安倍派の口をつぐませる人たちがいることは事実だ。民主主義は他者に世相の空気を読ませたり、ましてや発言の機会に圧力をかけることではない。
戦前と今回の事件を地続きに考えるなら、重大事件や経済危機が連続しておこるさなかで、主義主張が異なる他者に対して、寛容性を失い、国民大衆が自発的に足並みを一定方向に揃えていくことが問題なのではないか。
反対派の考えを、はいそうですか、と飲み込むことは難しいが、一方で法律に規制されていないにも関わらず、考えの違いで反対派を罵り、攻撃し、除外することは、それこそ意思と意見の「強制された」均質化を招く。
日本という同船に乗る限り、感情的に受け入れられなくても、その人たちとともにあることが民主主義の根本的な基盤にあるのではないかと今回の事件を通じて思う。
(*根拠や出典はない。)
異常な国、日本
世界各国の中央銀行が利上げを行っている。
これは主にコロナとロシアによるウクライナ侵攻に端を発する急激なインフレーションに対応するためだ。アメリカでは2020年前半のコロナによる混乱で失業率は14.7%*1になり、一方でコロナの回復に従い3.9%*2に増加するなど、経済の混乱が激しい。世界の工場になった中国や、タイを始めとする東南アジア、そしてインドなどで急速なコロナウイルスの流行による工場の操業停止は世界各国の流通網に打撃を与え、上流の製品の生産を停止させた。これに加えて、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻し、世界の穀物とエネルギー価格が輪をかけて上昇する事態になった。
各国の中央銀行はコロナ以前におおよその政策目標を達していた。リーマンショック(グローバル金融危機)に始まった世界経済の混乱は、伝統的な金融政策である金利の操作のみでは対応しきれず、非伝統的金融政策と言われる量的緩和政策を行った。それはフォワードルッキングによる中央銀行のアナウンス効果、中央銀行の資産の変更、そして中央銀行の資産を増加させることだ。これは中央銀行が物価目標を設定し(多くの先進国は2%)、リスク資産を購入し、そして資産を買い増すことで、市場に資金を流し、混乱しきった市場を正常化させる狙いがあった*3。この物価目標は、インフレ率2%というのが経済が成長するのに良い環境であるため、設定されている。そして物価目標達成を達成した国から順にテーパリングを始め、米国、欧州は政策の変更を決定*4、あるいは変更*5に向けた会議を行っている状態だった。一方で日本では、他の先進国に遅れ2013年、自民党政権に政権交代後、アベノミクスという形で、日本銀行は積極的な金融政策を行う方向にかじを切った。黒田総裁は白川前総裁の比較的緊縮的な政策から、緩和政策に切り替え、2014年5月に1ドル101円代だった為替は、2015年5月に120円代に下落*6した。財政政策と合わさり、日本の失業率は2014年の3.58%から2020年は2.78% *7になり、2019年には高卒の就職率は98.2%とバブル期並*8の数字を叩き出すことになった。だが、物価に関しては一時的に2%に達したものの、その後目標を超えることはなかった。そのため日銀は2016年にマイナス金利付き量的、質的金融緩和政策を行った。これにより政策金利として日銀当座預金の政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用した。続いて長短金利操作付き量的、質的金融緩和を行った。これは上記の政策に加え、長期金利に足して10年物国債金利が概ね0%程度で推移するように長期国債の買い入れを行うものだ*9。だがそれでも日本の物価は2%を超えず、世界各国のマクロ経済学者にも大きな疑問を呈することになっている。これがアベノミクス下で起きていた金融市場と経済のざっくりとしたまとめである。
確かに日銀は他の国に比べて金融政策の変更が遅かったにしろ、日銀の掲げる安定的な物価上昇を達成できていない。そこに今回のコロナから始まりウクライナ侵攻による世界的な物価高によるインフレと、世界各国の利上げが発生した。
日本の大きな問題点は物価の上昇が起きていないことだ。これは先程も書いたが多くのマクロ経済学者が頭を悩ましている問題で、日本の異常性を示している。バブル期から振り返ってみれば、確かに日本経済は大きなバブルを破裂させ、90年代の経済成長は失速した。これに対して日銀はゼロ金利政策と2000年代初頭に一時的な量的緩和政策を行っている。ある程度物価の上昇を確認したところで量的緩和政策を中断したものの、06年のライブドアショック、そして08年のリーマンショックを経験する。続けて2010年の欧州債務危機や11年の東日本大震災と日本経済が復活する暇が与えられていたかというと難しい。しかし世界からは失われた10年は20年に延長され、さらに延長されている。同時に日本国内でも実質賃金が維持、あるいは停滞する。新卒社員の初任給は1992年の18万6000円から2008年20万1000円からほとんど変わっておらず*102019年でも21万円となっている。またビッグマックの値段は2012年320円から2022年390円とこれもほとんど変わっていない*11。そして年金受給者の数は2022年で4040万人*12になっている。
物価の上昇に対する圧力は何が原因か。素人ながら考察すれば、賃金が上昇していないため、需要が伸びていないこと、そして年金受給者、つまり年単位の収入が一定の人たちが多くいるため、こちらも需要を伸ばすことができず、むしろ価格の上昇を引き下げる効果があったのではないかと思っている。つまり経済が循環するために日銀や政府が金をばらまいても、それがどこかで滞留し、広く消費者に回っていない状況が考えられる(これはアベノミクスのとき、トリクルダウン効果として言われ、シャンパンタワーに上からシャンパンを注ぐように上から下へ富が落ちてくると思われていた。しかし、アベノミクス以前からトリクルダウンは反対する意見もあり、実証研究でも否定的な文献もある*13。これはバブル崩壊やその後の失われた20年を経験した経営者などが、過去の痛みから会社に資金を持ち、かつ社員の給与をなかなか上げることができなかったことも背景にあるだろう(そのため、おそらくではあるがゾンビ企業と言われる「市場から出ていくべき企業」の割合は日本が高いだろうと思われる)。そして給与を上げられない原因の背景には、日本の解雇規制が強く働いているに違いない。これは会社が余剰人材を減少させられず、また給与上昇局面では保守的になる原因になってるだろう。一方で労働者は雇用が守られることにより、安定した生活によるライフプランの設計と住宅ローンなどの長期ローンを申し込むことができ、加えて会社内での先輩後輩関係から会社内での若年層の労働者に対する技術移転が起き、会社内での人的資本の蓄積につながっている。そのため賃金の上昇が起きていないひとつをとっても、メリットとデメリットがあり、また会社により事情が大きく異るため、足並みを揃えた方針転換は難しいだろう(おそらく日本の賃金停滞は労働者を不満にさせるほどではなく、生活に困るほどではない金額で均衡点が働いているものだと思われる。そのため物の値段は安い方に動き、かつ労働争議を始めとしたストライキなどがほとんど発生しない)。年金受給者に目を向ければ、資産を保有している年金受給者世代はたしかにいるだろうが、多くが預貯金はあるものの裕福に生活できるほどではなく、年金が総取得の100%を占める世帯は51.1%になっている*14。そのため生活に必要な最低限の物を購入しているのだとすれば、物価を低くする方向に圧力がかかるのは当然のことだろうと思われる。つまり賃金が低く固定された生産実行世代と年金受給者が増加を続ければ、日本の物価を維持または低くしようとする圧力が働くことは当然のように考えられる。だが、それが維持できるのはもって今年までだろう。
日本は今後、世界的な物価高に飲み込まれることになる。失われた数十年とともに日本人はほとんど物価の上昇を経験してこなかったし、多くの現役世代は初めての経験になる。そしておそらくロシアがウクライナに侵攻を続け、先進国がロシアに制裁を続ける限り、この物価上昇は止まることは無いだろう。そして日本銀行は物価目標を達成できないまま、円安が進むことを容認できず、量的緩和政策の停止と金利の上昇を余儀なくされると考えている。そして、これも多くの現役世代が経験していない金利の上昇が起こる。おそらくローンを組んで何かをすることが今以上に難しくなる環境になるだろう。そうするとこれから先の10年程度で起きると予想されるのは、物価の上昇、金利の上昇、それに伴う労働争議や年金受給者の上昇運動などこれまでの「安定した失われたn年」の状態が終わることだ。このパラダイムシフトは物を買える人と変えない人の格差をより明確にし、社会の不安定化につながるのではないかと思っている。厳しい経済環境に慣ればゾンビ企業が存続できず、雇用が流動化するだろう。しかし流動化した先に個人の雇用先が見つかればよいが、それが見つからない人はどうするか両輪で検討する必要がある。また雇用が流動化すれば、従業員の解雇規制をしていた日本にとってはある種、戦後の経済体制からの脱却になり、もし企業が社員の首を簡単に切れるように慣れば戦前のような型通りの資本主義時代に戻ることになる。そして当時の日本が大きな格差があったことや、それによる閉塞感が溜まっていたこと、そしてそのような国民は不満をいだきやすいことは歴史の記憶として認識する必要があるだろう。
(*素人が書いたもの。根拠や出典はない。)
画像:
*1:”アメリカの4月の失業率、世界恐慌以降で最悪の14.7%に 米労働省雇用統計:https://www.bbc.com/japanese/52596676”
*2:”米 失業率3.9%に改善 3%台は感染拡大前おととし2月以来:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220107/k10013420561000.html”
*3:当時はCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が米国の受託ローン債権を組み込んでおり、信用危機も同時に起きていた(2.急激な信用収縮と需要減に直面する日本経済:https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/200901/2009-1-2.html)
*4:米FRB、11月から量的緩和策の縮小開始を決定、毎月150億ドル減額:https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/11/44ac61f11f49fdd0.html
*5:ECB、金融緩和政策を維持、2022年第3四半期に資産購入終了の可能性を発表:https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/03/742f84727a06c333.html
*6:https://jp.investing.com/charts/forex-charts
*7:https://ecodb.net/country/JP/imf_persons.html
*8:バブル期並み98.2% 人手不足「即戦力に」:https://mainichi.jp/articles/20190518/ddm/001/100/138000c
*9:金融市場調節方針の変遷を教えてください。:https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b42.htm/
*10:使える!統計講座 【深瀬勝範】 - 第7回 給与水準を調べる⑦ ~初任給・標準者賃金~:https://www.rosei.jp/readers/article/55305
*11:https://data.nasdaq.com/data/ECONOMIST/BIGMAC_JPN-big-mac-index-japan
*12:https://www.nenkin.go.jp/saiyo/about/data.html
*13:「経済成長と格差について」
*14:【図解・行政】高齢年金受給世帯の状況(2019年7月):https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_seisaku-syakaihosyo20190702j-10-w390