2024年アメリカ大統領選挙の考察

11月5日、アメリカ国民は第47代大統領にトランプ候補を選択した。
結果的に、選挙の接戦を予測とは異なり、トランプ候補が「圧勝」した。
大統領経験者が再選されたのはアメリカで2度目だ。
(前回の「連続ではない2期」の大統領を務めたのは1885年、1893年に大統領に就任したグロバー・クリーブランド)
この記事ではこれまでの大統領選挙を振り返り、候補者たちが主張してきたこと、アメリカ国民が考えていること、大統領選挙の投票結果、そしてこれから何が考えられるかを見ていきたい。
これまで候補者たちは何を言っていたのか?
経済、中絶、移民、外交、貿易、銃に絞って見ていく。
ハリス候補者は何を言っていたのか?
- 経済は物価の引き下げが最大の課題としていた。
- 中絶は女性が決めるものだとしていた。
- 移民について不法移民を取り締まる姿勢をこれまでより強く見せていた。
- 外交はウクライナ戦争の支援、長期的な中国への勝利、中東ではイスラエルとパレスチナの両国家としての解決と戦争終結を述べていた。
- 貿易はトランプの関税を批判している。
- 銃は銃規制の強化するとしていた。
トランプ候補者は何を言っていたのか?
- 経済はインフレを終わらせること、金利の引き下げを公約していた。
- 中絶について具体的には述べていない。
- 移民について壁をつくり国境を封鎖するとして、不法移民を強制退去させることを公約している。
- 外交はウクライナ戦争の停戦、イスラエル支持を明確にしている。
- 貿易は中国に対する高い関税を述べていた。
- 銃について全米ライフル協会で友人だと述べていた。
アメリカ人は何を考えていたのか?
アメリカ人は現状をどう見ていたのか?

【米大統領選2024】 それぞれの候補にとって勝因となり得る計10の強み - BBCニュース
国の状態と経済についてアメリカ人の相当数が不満を持っていることが分かる。
アメリカ人の大統領選挙での重要なテーマは何だったのか?

【米大統領選2024】 それぞれの候補にとって勝因となり得る計10の強み - BBCニュース
ハリス候補者の支持者の上位3つは医療、最高裁判所の人事、経済の順だった。
福祉や法秩序を重んじており、その後に経済だった。
トランプ候補者の支持者の上位3つは経済、移民、凶悪事件だった。
経済が最大の問題で、移民と凶悪事件など治安を問題視している。
アメリカ人の経済の状況はどのようなものか?
第一次トランプ政権(2017−2021年1月20日)とバイデン政権(2021−2025年1月20日)の期間で物価、失業率、賃金、クレジットカードローンの延滞率を比較する。
サマリ
第一次トランプ政権とバイデン政権の期間を通じて、新型コロナウイルスとウクライナ侵攻により経済が混乱していることがわかる。
物価は第一次トランプ政権の後半のコロナウイルスの流行により、ロックダウン状態になったことにより劇的に下落し、規制解除に向かうと物流の混乱などにより物価が上昇する。バイデン政権では序盤でコロナ以降の物価高、その後ロシアによるウクライナ侵攻で物価は大きく上昇して高止まりしたあと、徐々に下落、安定した状態になっている。
失業率は第一次トランプ政権時の後半、コロナウイルスの影響により劇的に上昇したあと、急落している。バイデン政権では失業率は徐々に回復し、3%台の安定した状態を維持している。
賃金のひとつの指標である時給では第一次トランプ政権時のコロナウイルスの流行時に急上昇後、急落している。バイデン政権では右肩上がりに上昇を続けている。また上昇幅はバイデン政権期のほうが30ドルから35.5ドルと、第一次トランプ政権期の26ドルから30ドルに比べ、1.5ほどドル高くなっている。
クレジットカード・ローンの延滞率では第一次トランプ政権期とバイデン政権期で逆の動きが見られる。前者ではコロナウイルスの時期を境にして、延滞率が減少している。全体として、第一次トランプ政権では2.4%から1.8%に減少している。一方で後者では2021年頃に底を打ったあと上昇を続けている。全体として、バイデン政権では1.8%から3.2%に上昇している。この原因にはコロナウイルス流行後とロシアのウクライナ侵攻によるインフレや、コロナウイルス流行中の補助金を使い切ったことが理由として考えられる。
物価の変化
2017年1月20日−2021年1月20日 第一次トランプ政権期

2021年1月20日−2024年9月1日 バイデン政権

バイデン政権は第一次トランプ政権に比較してインフレが過剰に進んでいることが分かる。
Consumer Price Indices (CPIs, HICPs), COICOP 1999: Consumer Price Index: Total for United States
https://fred.stlouisfed.org/seriesBeta/USACPALTT01CTGYM
失業率の変化
2017年1月20日−2021年1月20日 第一次トランプ政権期

2021年1月20日−2024年9月1日 バイデン政権

失業率は新型コロナウイルスの流行の影響があり、第一次トランプ政権期に極度に上昇している。バイデン政権では失業率が劇的に減少し、安定した状態になっている事がわかる。
Infra-Annual Labor Statistics: Unemployment Rate Total: From 25 to 54 Years for United States
https://fred.stlouisfed.org/seriesBeta/LRUN25TTUSM156S
賃金の変化
2017年1月20日−2021年1月20日 第一次トランプ政権期

2021年1月20日−2024年9月1日 バイデン政権

両方の政権期で賃金の上昇は見られるが、バイデン政権期のほうが平均時給のほうが高くなっている。
Average Hourly Earnings of All Employees, Total Private
https://fred.stlouisfed.org/seriesBeta/CES0500000003#
クレジットカードローンの延滞率
2017年1月20日−2021年1月20日 第一次トランプ政権期

2021年1月20日−2024年4月1日 バイデン政権

クレジットカードの延滞率は第一次トランプ政権期で減少しているが、バイデン政権では上昇している。これはインフレにより家計の出費が困難になっていることを示している。
Delinquency Rate on Credit Card Loans, All Commercial Banks
https://fred.stlouisfed.org/seriesBeta/DRCCLACBS
投票結果はどうだったのか?
大統領選挙の結果は?

2024年米選挙:ハリス、トランプのどちらが大統領に | 開票結果と得票数を地図、チャートでライブ表示
大統領選挙では各州にいる538人の選挙人から過半数を得た候補が大統領に選ばれる。
多くの州では民主党、共和党のどちらを選ぶか伝統的に決まっており、それ以外のどちらを選ぶかわからない州を激戦州としている。
今回の選挙の激戦州はアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネヴァダ、ノースカロライナ、ペンシルヴァニア、ウィスコンシンの7州だった。
トランプ候補がウィスコンシン、アラスカでの勝利により、選挙人の過半数以上である279人を獲得したことで当選が確実とされた。
またトランプ候補は現在集計中の州を含め、激戦州で全勝することが予想されてる。
誰がどのように投票したのか?

US election 2024 results and exit poll in maps and charts
ハリス候補に投票した人の傾向:女性、黒人、ラテン、アジア、18−29歳、大卒以上
トランプ候補に投票した人の傾向:男性、白人、その他人種、45−64歳、大卒未満
明確な傾向としてはハリス候補は多くの黒人から、トランプ候補は比較敵多くの白人から支持されていたことが分かるが、概ねどのセクションでも拮抗していたことが分かる。
各国からの反応は?
トランプ候補が当選確実となり、多くの国が祝意を示している一方で、トランプ候補が大統領に就任すると大きく影響を受ける国や組織は独特のコメントをしている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「トランプ大統領の断固とした指導力の下、強い米国の時代到来を期待する。米国からウクライナへの強い支援が超党派で続くことを頼みにしている」と述べた。
ロシアのプーチン大統領は「ロシアとの関係を修復し、ウクライナ危機終結を後押ししたいと話したことは注目に値すると思う」と述べた。
中国の習近平国家主席は「安定した健全で持続可能な2国間関係は、両国の共通の利益と国際社会の期待に沿ったもの。」と述べた。
台湾の頼清徳総統は「心からのお祝いを申し上げる」と述べ、台湾とアメリカのパートナーシップについて自信を示した。
イスラエルのネタニヤフ首相は「史上最も偉大なカムバック、おめでとうございます! あなたのホワイトハウスへの歴史的な復帰は、アメリカの新たな始まりと、イスラエルとアメリカの偉大な同盟関係を強力に確認するものになる」と述べた。
ハマスの幹部は「パレスチナ問題の解決につながるとは思っていない。イスラエル軍の攻撃が続くかぎりわれわれは抵抗する」と述べた。
イギリスのスターマー首相は「最も近い同盟国として、自由、民主主義、進取の気性という共通の価値観を守るため、私たちは肩を並べて立っている」と述べた。
これからどうなるのか?
トランプ候補が来年2025年1月20日から大統領に就任する。
誰が大統領になってもこれからどうなるかを正確に予測することは不可能だ。
本人がやりたい政策も内外の状況により制約を受けるため、少数の政策を除き、妥協的なものが出来上がる。
また過去に大統領の経験がある候補が再度大統領になることもアメリカ史上2人目となり、経験がどのように作用するかは不明だ。
しかし、第一次トランプ政権で要職に任命されたあとその職を去った人たちが再度政権内に入ることはない。よりトランプ候補者の色が強い人々が入閣することが予想される。そのため、第一次トランプ政権より、第二次トランプ政権のほうが、より彼の考え方に近い人が周囲を固めると考えられる。
またトランプ候補は彼の支持者の期待に答えるため、経済、移民、犯罪対策は必須になる。またこれらをコアにして外交政策にも転用されることが考えられる。
例えば国内経済をより良い状態にするため、外国の製品を締め出すため関税を上昇させたり、不法移民の出身国に対して強制送還した費用や、移民をやめない限り関税を使って他国に規制を与えようとするかもしれない。また犯罪対策として、アメリカ国民の自由をある程度規制する可能性もあるかもしれない。
ただトランプ支持者にとってトランプ候補者が大統領になったから、自分たちの生活が楽になるか、偉大なアメリカが返ってくるかというと決してそうではないことが推測される。
データを見ると、バイデン政権がアメリカの運営を間違えたというより、コロナウイルスの流行後の対応やロシアによるウクライナ侵攻など外的な要因により、アメリカの経済が被害を受けたからだ。
もしトランプ大統領でうまくいかないとき、また民主党を選ぶのか、それとも他の選択肢があるのか、それはトランプ大統領の任期のあとの最初の大統領選挙になるまでわからない。
参考
2024年米選挙:ハリス、トランプのどちらが大統領に | 開票結果と得票数を地図、チャートでライブ表示
【米大統領選2024】 ハリス候補とトランプ候補の政策は 要点を比較 - BBCニュース
【米大統領選2024】 それぞれの候補にとって勝因となり得る計10の強み - BBCニュース
【米大統領選2024】 世論調査の動きはどうなっているのか - BBCニュース
【米大統領選2024】 7つの激戦州の影響力 勝敗を大きく左右 - BBCニュース
【米大統領選2024】 トランプ候補、激戦3州獲得の予想受け「勝利演説」 ハリス陣営は演説中止 - BBCニュース
激戦7州でトランプ氏が全勝の勢い 全米で票伸ばす「赤いシフト」 [アメリカ大統領選挙2024]:朝日新聞デジタル
「トランプ外交」再始動 各国首脳から祝意、2期目備え―政権発足作業着手へ:時事ドットコム
US election 2024 results and exit poll in maps and charts
ウクライナ大統領、SNSでトランプ氏に祝意 - CNN.co.jp
トランプ氏のウクライナ巡る提案「注目に値する」-プーチン大統領 - Bloomberg
習国家主席がトランプ氏に祝意表明、相互尊重・平和共存・ウィンウィンの協力関係の原則を堅持(中国、米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
ネタニヤフ首相とアッバース議長がトランプ氏に祝意表明、米国の中東情勢対応に注目(パレスチナ、米国、イスラエル、イラン) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
“トランプ氏の勝利 問題解決につながらない” ハマス幹部 | NHK | イスラエル・パレスチナ
【米大統領選2024】トランプ次期米大統領に続々と祝辞 イスラエルやイギリスなど各国首脳、NATOトップも - BBCニュース
PDF注意:米大統領選を受けた経済・産業への影響~国民の「内向き化」が招く米国第一主義の帰結とは?~
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/mra/pdf/vol030.pdf
銃弾の意味は

銃弾の意味は異なる
安倍元首相が銃撃を受けた結果、当時の自民党内最大派閥の安倍派は瓦解し、統一教会と関係のあった議員はパージされた。また安倍派が主導したという裏金問題の結果、派閥そのものが解散させられ、党の体制変化がおきた。この結果、総理大臣候補から安倍派が一掃され、また、安倍派に近しい民族派や右派が政治への拠り所を無くし、自民党批判に変化した。犯人が全く意図しない形で、統一教会の問題が明るみになり、そして政治と宗教の分離が断行された。
トランプへの銃撃はまさに天が彼に味方した。銃弾は確実に彼を捉えていたにも関わらず致命傷には至っていないし、全てをショーにするこの男にとっては好都合だった。まるで映画のような構図の写真は、彼がアメリカ大統領として、力強く困難に決して屈しない象徴として歴史に残るだろう。また反トランプの人々にとっても、興奮と諦めを促す写真にもなったはずだ。民主党にとって、もはや大統領候補を変えたとして解決できる状態ではなくなった。
それではトランプが大統領になることに問題はないのだろうか?
トランプの政策は世界で受け入れられるようなものではない。もしトランプが再度大統領に返り咲けば、ウクライナ戦争はおそらくロシアの主張どおりに停戦するだろう。またイスラエルはアメリカのプレッシャーを和らげることができるだろう。その結果、特に最初期には専制国家と呼ばれる国々の思い通りになる。またそれらをウクライナやNATOが受け入れられるはずはなく、アメリカに正式に反対を表明するし、トランプはそれを機にアメリカが欧州に介入することを減らすようになるかもしれない。「偉大なアメリカ」は独裁者が統治する国家のように振る舞うのだろうか。第一次トランプ政権は保守派や変わり者が多数いたが、「アメリカのため」に仕事をする人達だった。だからこそ彼らはトランプと衝突して政権を去っていった。第二次トランプ政権には彼ら、彼女らのような人たちが入るだろうか。これは疑わしいと言わざるを得ない。より「トランプのため」に仕事をするトランプに近しい人達が入閣するだろう。これは第一次政権より第二次政権のほうがトランプにとってより好都合に物事を動かすことができるようになるということだ。そのため第二次政権はより、彼の意思が反映されやすい状態になるだろう。
そのような状態が予見されるが、アメリカ以外の国はどうすればよいか?
独裁国家のように振る舞うアメリカをどのように扱えばよいか?西側はアメリカを含めつつ、独自の「力」を強化する必要に迫られるだろう。そのため、より力強い保守的かつ統制的なリーダーが求められるようになるし、穏健と言われている人々も現実的な対応をせざるを得なくなる。日本や韓国などはアメリカに頼ることなく地域での防衛条約を結ぶことになるかもしれない。一方で専制国家側はアメリカとよりよい「ディール」を模索するだろう。アメリカにYesと言わせれば、専制側は国境を超えてやりたいことができるようになる。もはや西側はひとつの国で中国やロシアなどと対峙する力はない。グローバルサウスはこのような対立とバランスの中で、自分たちの経済成長を目指し、特に首位グループは地域の覇権を狙うようになる。例えば東南アジアとオセアニアの間に位置するインドネシアや、アフリカで最大の人口を持つナイジェリアなどは地域での特権を手に入れようと画策するかもしれない。もちろんそれに反対する国も多く出現するはずで、このような国家間の競争は国際関係をより複雑にする。
アメリカという一つの極の時代は終わりを迎えている。冷戦に勝利したアメリカと西側による統治は、西側諸国に利益をもたらしたが永続はしなかった。西側の平和で波風の穏やかな時代の終幕を見ようとしている。1990年代から2020年代までが戦間期だった、と後世の歴史家に評価されないことを望む。
100年前の出来事

今年は2024年なので1542年から1924年までの100年ごとに、Wikipediaから自分が気になったことを拾った。
1524年
- ジョバンニ・ダ・ヴェラッツァーノがアメリカ大陸を発見する
- ドイツ農民戦争の勃発
- フランシスコ・ピサロがインカ帝国の第一次調査を行う
- ジョバンニ・ダ・ヴェラッツァーノがマンハッタン島に到達
1624年
- フランスのリシュリューが宰相に任命(-1624年)
- 三十年戦争でフランス(リシュリュー)主導の対ハプスブルク同盟結成
- ノルウェーのオスロが大火で破壊される
- 寛永元年
- 江戸幕府がスペイン船の来航を禁じる
1724年
1824年
- 1月
- 2月
- イギリス、イタリアがソビエト政権を承認
- ラプソディ・イン・ブルー初演
- 3月
- トルコでカリフ制が廃止
- 4月
- イタリアでファシスト党が勝利
- 5月
- 6月
- 7月
- 8月
- ドイツ賠償問題に関するドーズ案成立
- 9月
- 東京将棋連盟設立
- 10月
- 11月
- 12月
- エドウィン・ハッブルが系外銀河の発見を発表
BOJのYCCに関する個人的なメモ

画像*1


- 導入の経緯*4*5
- 2013年4月:”量的・質的金融緩和”開始
- 2016年1月:”マイナス金利付き量的・質的緩和”開始
- 2016年9月:”イールドカーブコントロール(YCC)”とオーバーシュート型コミットメント開始
- 2021年3月:10年もの国債の金利の変動幅を±0.25%にする
- 貸出促進付利制度:金利下落時の金融機関への影響に対して、BOJが貸出促進の各種資金供給について残高に応じた金利のインセンティブを付与する制度
- https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2021/k210319a.pdf
- 2022年12月:10年もの国債の金利の変動幅を±0.5%にする
- 2023年7月:変動幅を目途年、長短金利操作を従来より柔軟にする(長期金利実質1.0%を容認)
- 2023年10月:さらに柔軟化することを発表




- 日本の物価の推移*9
- Core CPI (Core consumer Price Index):総合指数から生鮮食品を除いた指標
- 長期

- 1年

*1:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/10974994/
*2:イールドカーブ・コントロール (YCC) って何 ? 為替に与える影響は ? | マネー | おすすめコラム | 大和ネクスト銀行
*3:イールドカーブ | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
*4:【1分解説】イールドカーブ・コントロール(YCC)とは? | 執筆者なし | 第一生命経済研究所
*5:2%の「物価安定の目標」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」 : 日本銀行 Bank of Japan
*8:NIY=F Interactive Stock Chart | Nikkei/Yen Futures,Dec-2023 Stock - Yahoo Finance
中東に関する個人的なメモ
神経質な対立が生じている
- ハマスによるイスラエルの攻撃に対する”ガザ”への報復が行われている
- ハマスによる攻撃の結果と、イスラエルの報復攻撃の結果の共有がSNSで広がっている
- アラブ、イスラム社会のハマス、パレスチナへの連帯と、米国と米国を含めた”G6”のイスラエルの連帯が対立軸を作っている
- 地域の問題だけではなく、G6をはじめ欧米に多数存在している”パレスチナを支持するイスラム系移民”との対立に拡大している
- イスラエルは強硬的な姿勢を崩さず、特にヨーロッパからの支持を下げているが、アメリカは強く支持している
- ウクライナ侵攻によるロシアの国連常任理事国としての拒否権が国連機能を麻痺させているように、アメリカの拒否権が国連機能を麻痺させようとしている
- イスラエルに対する一時的な戦闘行為の停止への拒否権発動
- おそらくネタニヤフ政権は穏便に済まさない
- ネタニヤフ政権は”次期選挙”を見越して強行姿勢を崩すことができない
- ハマスは攻撃で政治的目的を”成功”させ、攻撃を辞める必要がない
- 上記の理由により武力停止交渉が成立しない可能性が高い
- 中東の問題は再度欧米先進国の世界的な産業構造にNOを突きつける可能性が出てきた
- ロシアの天然ガスと中東の石油が手に入れられない場合、西側ヨーロッパ(特にイギリス、ドイツ、イタリア、スペインやベネルクス等を想定(フランスは除く))のエネルギー状況が悪くなる可能性がある
ハマスがイスラエルを攻撃した
イスラエルは国際社会の同情を買いながら、ガザ地区のハマスの掃討作戦をするだろう。
イスラエルが最も重要視するのはアメリカとの関係なのは疑いようがない。もしアメリカとの関係がなくなればイスラエルが置かれている地理的な位置と同じように孤立化するからだ。そのため核兵器や非人道的な攻撃を行うことができない(ただしイスラエルは過去にも西側が持ちうる”ライン”を超えるようなあらゆる攻撃をパレスチナ自治区に加えていたことは忘れてはならない)。
ハマスはイスラエルの報復を予見しているはずだ。2023年10月6日は、第四次中東戦争(1973年10月6日から10月23日)から50年になる節目の年で*1、また10月6日はユダヤ教の贖罪の日(ヨム・キプル)で安息日になっている*2。そのため、戦略的な行動というより、節目に合わせた攻撃と見ざるを得ない。しかし、今回の攻撃はかなり用意周到に準備されており、イラン製の武器やドローン攻撃、一部ではパラグライダーを使った空挺作戦も行われている。その中でイスラエル軍の戦車や装甲車が鹵獲されたり、軍人や警察、民間人が”捕虜”としてガザに連れ去られている。特にネットに出回っているハマス側の動画では、ウクライナ軍がロシアに対して行っているようなイスラエルの重要拠点に対するドローン攻撃の様子が公開されている。イスラエルのネタニヤフ首相は戦争状態を宣言し*3、イスラエル空軍によるガザ地区への空爆の様子が動画で公開されている。
ネタニヤフ政権は2022年12月に第一党を”リクード”党で連立政権として発足している。閣僚の中には右派が多く任命され、”イスラエル史上最も右よりの政権”とされている*4。また2023年7月にネタニヤフ政権は裁判所を弱める司法制度の改革を可決し、市民が反対デモを行っていた*5。このように民主的な政権から、政権が多くの権力を持つ専制的な体制への移行を行っている。
ハマスは2007年のガザの戦闘でファハタを追放後、ガザ地区を当地している。イスラエルとは散発的に戦闘を繰り返しており、2008年のガザ紛争、2014年のガザ侵攻*6では両方ともイスラエル・パレスチナ紛争で第四次中東戦争以降最大の犠牲者を出している。
ネタニヤフ政権は今回の攻撃を受け、ハマスと”穏便な合意”をするつもりはないだろう。そのため国際社会の停戦に向けた動きが重要になるが、アメリカやイギリスはイスラエルを支持しており、英米の介入による早期停戦は難しい。アラブ諸国はパレスチナに同情的で、サウジアラビアやカタールはパレスチナ問題が起因しているとしている。またアメリカはイスラエルとサウジアラビアの国交正常化に向けた動きを促していたが、難しい状況に追い込まれる*7。もし停戦をするなら、2014年と同じように両者が勝利宣言を行い、軍事に勝るイスラエルがガザ地区の領土を一方的に”併合”するのではないか。しかし今回はハマスの先制かつ民間人への攻撃のため、イスラエルが弱腰になることはありえないが、一方で無差別な攻撃はアメリカを始めとした西側の支持の減少を招く。またイスラエルが空爆や地上軍の投入をした場合、ハマスはガザ地区の市民や”捕虜”を”人間の盾”として利用することが予想される。イスラエルの目標がまだ不明なため、どのような経過をたどるか不明な要素が多いが、今回の攻撃が新しい紛争になることは間違いないだろう。
画像*8
*1:https://ja.wikipedia.org/wiki/第四次中東戦争
*2:https://en.wikipedia.org/wiki/Yom_Kippur
*3:https://www.yomiuri.co.jp/world/20231007-OYT1T50201/
*4:https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/194a49bb032e66de.html
*5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR24BY80U3A720C2000000/
*6:https://ja.wikipedia.org/wiki/ガザ侵攻_(2014年)
*7:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230921/k10014202041000.html
今年の冬は歴史が動く冬になるかもしれない
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世界はこの冬を耐えることができるか
ウクライナが9月10日に大幅に領土を奪還した*2。そこから進軍の勢いがとどまることなく、9月30日に要衝のリマンをロシアから解放した*3。そのような中、ロシアのプーチン大統領はウクライナの4州に対して9月30日「併合」を宣言し、自国に「編入」した*4。この急な「併合宣言」はウクライナの急襲により予定を前倒して行われた。


リマンの位置*6
プーチン大統領はこの声明文の中で「あらゆる兵器」を使用する可能性を示した。「あらゆる兵器」の中には核兵器が入るだろう。この核兵器は、いわゆる原子爆弾ではなく、戦術核兵器と呼ばれる低出力核兵器が候補として考えられている。
ゼロとは言い切れない状況になっていることは間違いない。
そのため、「どのようなタイミングで(戦術)核兵器が使われる可能性が高まるか」を考察する。
ここでは関係国がどこまで「追い込まれた」状況になるかという観点から考える。
ロシアが「追い込まれる」状態
ロシアが追い込まれる状態になるときは、次のケースが考えられる。
ウクライナはロシアに奪われた領土の奪還を目指している。現在のウクライナ軍は東部の一部の領土奪還に成功し、反対にロシア軍は兵器をそのまま置いて逃走するなど、統率能力の低下や人員の減少に悩まされている。その結果、ロシアは部分動員令が発令され、ロシア人の青年が軍に徴兵される状況になっており、ロシア人の国外脱出が報道されている。またプーチン大統領の「あらゆる兵器」発言もこのウクライナの進軍を受けてのものと考えられる。
ウクライナがロシアから奪われた領土にはいくつかレイヤーがあると考えられる。
- 今回編入宣言をされたザポリージャ、ヘルソン、ルハンシク、ドネツク各州のエリアのレイヤー
- すでに独立宣言をしていたよりロシア国境に近いルハンシク人民共和国、ドネツク人民共和国のエリアのレイヤー
- 2014年に奪われたクリミア半島のエリアのレイヤー
それぞれの地域は今回の宣言で「併合」された地域、ロシア軍が「特別軍事作戦」をする理由となった地域、そしてロシア海軍の黒海艦隊があるクリミア半島地域だ。
おそらく今回編入宣言をした地域を奪還された場合、(戦術)核兵器を使う可能性は低いと考える。それはこの地域がアゾフ海沿岸の支配を目的にした地域であり、かつ現時点でロシア軍が明確に支配をしている地域として編入した考えられるからだ。
旧ルハンシク、ドネツク人民共和国の地域が奪還された場合、(戦術)核兵器を使う可能性は前者に比べるとわずかに高いと考える。そもそもこの「特別軍事作戦」が始まったのはこの地域をウクライナの「ネオナチ政権」から解放することだからだ。戦争目的であるこれらの地域が再度ウクライナに支配されることになれば、ロシアにとってこの戦争の大義がなくなる。
クリミア地域が奪還される可能性が出た場合、(戦術)核兵器を使う可能性が最も高いと考える。この地域は2014年からロシアが強権的に実効支配をする場所で、黒海艦隊の母港であり、地理的、歴史的にもロシアにとって重要度が高い。
しかし(戦術)核兵器を使うことは、今回の戦争のステップを数段上げることになり、民間地域に対する攻撃などが実施されるなど最悪の事態が起こった場合、NATOの直接軍事介入が考えられる。だがNATOも一枚岩ではない。ロシアと国境を接する国はロシアに強硬で、地理的に遠いイギリスやアメリカも比較的強硬だ。一方、ロシアにエネルギーを依存するドイツやイタリアは比較的ロシアに寛容であり、フランスはマクロン大統領がプーチン大統領と定期的に連絡を取り合っている。そのため、ヨーロッパが追い込まれた場合、またアメリカが追い込まれた場合、ロシアの(戦術)核兵器を使用するボーダーラインが緩まったり、ウクライナへの支援が減少する可能性がある。
ヨーロッパが追い込まれる状態
ヨーロッパが追い込まれる状態は今冬のエネルギー問題、インフレ、そして極右の台頭だ。
- ロシアへの経済制裁によるエネルギー価格の上昇
- COVID-19とロシア制裁によるインフレ
- ヨーロッパ地域での極右政権樹立、極右政党の台頭
ヨーロッパは原子力を除き、天然ガスなどをロシアに依存していた。例えばドイツは2016年には原油の40%、天然ガス60%、石炭28%をロシアから輸入していた*7。そしてロシアに対する経済制裁の結果、ヨーロッパはロシアの資源の輸入を順次停止し、欧州各国の公共料金は上昇を続けている。例えばイギリスの電気ガス料金は80%引き上げられ標準家庭で4188ドルに達した*8。
またCOVID-19の流行で上昇していた物価がロシアへの経済制裁によりさらにブーストしている。2022年8月のEU域内のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は前年比9.1%上昇しており*9、エネルギーと飲食料を除いたコア指数も5.1%上昇している*10

HICPの時系列グラフ(https://www.ecb.europa.eu/stats/macroeconomic_and_sectoral/hicp/html/index.en.html)
企業や店舗、家計に与える影響が長期化すれば、経済が混乱することが予想される。経済の混乱はよりポピュリスト的な政党の進出を押すことになる。そしてそれらのポピュリスト的な政党は右派や極右であることが多く、党や党首は親ロシア派が多い(例えばフランスのルペン、イタリアのメローニなど)。これらのポピュリスト的な右派や極右政党がヨーロッパ各国で増えれば、ロシアに対して団結した行動が難しくなる。その結果、ウクライナへの金銭、武器の支援も減少する可能性がある。そして、これらの可能性はロシアの選択肢を増やすことになり、NATOを内側から混乱させる効果を持っている。
アメリカが追い込まれる状態
アメリカが追い込まれる状態は、中間選挙によるトランプ派の勝利とアメリカ第一主義の復活とインフレ対策のための金利の引き上げだ。
- アメリカの中間選挙でバイデン政権がまともに政権運営ができないほど共和党が支配的になる
- 共和党の候補者のうち、MAGA(トランプ派)議員が議席を多く獲得し、時期大統領選挙にトランプ大統領が出馬宣言をして、ショーイズム的な政治と選挙が行われる
- インフレ対応のためFRBが金利を上げ続け、経済にダメージを与える
中間選挙は大統領選挙と大統領選挙の間にある連邦議会の上、下院と州知事選挙で2022年11月8日に予定されている*11。一般的に中間選挙は大統領選挙への熱狂が落ち着いたころに行われれるため、与党の議席が減ると言われている。今回も同様に共和党候補が民主党候補より議席を取ることが予想され、「ねじれ議会」になり、アメリカの意思決定が遅れる可能性がある。
特に今回の選挙ではトランプと政治的考え方が近い「トランプ派」の候補が多い。トランプが大統領選挙のときによく言っていた「Make America Great Again」から、「MAGA候補」と言われる。現在はMAGA候補の優勢が伝えられており、穏健的な共和党候補が出馬を取りやめる事態もおきている。MAGA候補が増えれば、トランプと同様、自国第一主義やロシアに対して穏健的な議員がアメリカに増えることになる。
最後に、このようなポピュリスト的な候補が増加するのは、アメリカの経済状況に原因があると考えられる。COVID-19の流行から世界各地でのロックダウンの影響でサプライチェーンが傷んでいる。また各国の政府が補助金を出しているため労働者が市場に戻らず、労働者の賃金が向上して物価が上がる循環が続いている。特にアメリカではインフレ率が8.3%で物価の上昇が深刻になっている*12。
FRBはインフレの抑制のため、QE(量的緩和政策)をやめ、QT(量的引き締め)、そして金利の引き上げに動いている。単純化すれば、金利の引き上げは債権金利の引き上げにも繋がり、米国債の需要が上がる。その結果、アメリカではドルが高くなり、その他の国は相対的に自国通貨安が起こる。金利と物価の上昇を中長期に渡ることはアメリカ経済にとって悪影響をもたらす。このような経済環境の中で、トランプ旋風のときに言われた「貧しい白人たち」が自国第一主義的なMAGA候補に投票することは想像に難しくない。
戦争が始まった当初、世界は協調してロシアに反対する姿勢を見せた。しかしCOVID1-19が流行してから感染症による経済へのダメージと、世界的な供給不足によるインフレが重なり、戦争の影響が広がる中、グローバル経済は徐々に閉じてきている。エネルギーや資源、穀物などの輸出を停止した国が出てきており、その結果、インフレに拍車がかかる悪循環が起き、一部の国ではデモや暴動がおきている。
経済の痛みは生活の痛みに直結する。これから北半球は冬を迎え、燃料の価格は家計に大きく響く。ロシアはウクライナを支援する国々の経済の混乱と自国第一主義の台頭を見逃さないだろう。ロシアへ融和的な政権が各地でできれば、ロシアの自由度は上昇する。ロシアへの反撃が少ないと思われれば、ロシアは躊躇なく(戦術)核兵器のオプションに手を出すだろう。
経済と家計が痛む冬にどれだけ耐えることができるか。
それが今後の世界の歴史を大きく動かす。
*1:https://pixabay.com/ja/photos/%e9%9c%a7-%e9%a2%a8%e6%99%af-%e5%b1%b1-%e3%82%b5%e3%83%9f%e3%83%83%e3%83%88-7482180/
*2:ウクライナ軍、電撃的な反転攻勢:https://graphics.reuters.com/UKRAINE-CRISIS/jnvwemlodvw/ja/
*3:再送ウクライナ軍、目標達成順調 リマン奪還はロシアに痛手=米国防総省高官:https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-usa-pentagon-idJPKBN2QY210
*4:ロシア、ウクライナ4州の「編入」を一方的に宣言 ウクライナはNATO加盟申請を発表:https://www.bbc.com/japanese/63086836
*5:https://www.asahi.com/articles/ASQ9B031SQ99UHBI07B.html
*6:https://www.bbc.com/japanese/63106264
*7:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2019html/1-2-3.html
*8:焦点:光熱費が欧州の家計直撃、シャワーは職場で食事は1回:https://jp.reuters.com/article/power-prices-fuel-poverty-idJPKBN2PZ09P
*9:ユーロ圏CPI速報値、8月は前年比+9.1% 再び過去最高更新:https://jp.reuters.com/article/ez-cpi-aug-idJPKBN2Q10VU
*10:ユーロ圏CPI、7月改定値は前年比+8.9% 過去最高更新:https://jp.reuters.com/article/euro-cpi-idJPKBN2PO0K8
*11:いったいどんな選挙?アメリカ中間選挙の「基礎」を解説:https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2022/09/30/25701.html
*12:米の8月の消費者物価指数8.3%上昇 記録的水準のインフレ続く:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220913/k10013816811000.html


